横浜「手捺染スカーフ」の美しき伝統をもっと身近に。Yokohama Tenassen Collection | renacnatta STORY

2022年10月31日、renacnatta(レナクナッタ)の「Yokohama Tenassen Collection」に、新たなスカーフが加わります。2021年からスタートした「Yokohama Hand Printed Silk Scarf - Red」の色を新調した「Yokohama Hand Printed Silk Scarf - Navy」は、1作目とは異なる表情のスカーフになりました。
このスカーフは、横浜で伝統的な手仕事によって仕立てられた「横浜スカーフ」です。1作目のスカーフに続いて、株式会社丸加とタッグを組んでいます。
かつて生糸を世界へと輸出する貿易港として知られた横浜では、世界が認める高品質のスカーフを生み出す技が受け継がれてきました。丸加は70年以上、地域の名産品として横浜スカーフを作り続けながら、スカーフのある日常を横浜の文化として発信しています。
「Yokohama Tenassen Collection」は、そんな横浜スカーフの技術と魅力によって実現しました。スカーフを使ったことがない人が普段使いできるように、株式会社丸加の取締役・遠藤 洋平さんとレナクナッタでディスカッションを重ね、1枚でおしゃれの幅を広げられるアイテムになっています。

横浜スカーフに込められた美しさについて遠藤さんに伺いながら、レナクナッタが今こそスカーフを作りたかった理由をお届けします。
スカーフの美しさが、家業に入る決め手になった

異国を感じさせる街並みに、海風が吹き抜ける港町。全国有数の港である横浜港が開かれたのは1859年のことです。
開港したばかりの横浜港から世界へと輸出された品目のうち、長らく輸出量の第一位を占めていたのは生糸でした。横浜には全国の産地から生糸が集まるようになり、絹織物や、色鮮やかなプリントを載せたスカーフの生産が広まったと言われています。これが現在まで続く「横浜スカーフ」の由来です。
スカーフやストールなどの首まわりのアイテムを手がけている株式会社丸加は、横浜港の近くに1952年に設立されました。設立者は遠藤さんの祖父です。

祖父が設立した株式会社丸加の取締役を務める遠藤 洋平さん
遠藤さんにとって親戚の多くが携わっていたスカーフづくりは身近な存在でしたが、新卒でアパレルメーカーに就職した理由は、ファッションが好きだったから。家業に入ることは考えていませんでした。
その後4年勤めたメーカーを退職し、丸加に入社します。自分の将来と家業に思いを巡らせていた遠藤さんが決断した理由は、スカーフそのものの魅力にありました。
「やっぱり、スカーフがきれいだから。それに尽きると思っています」

遠藤さんが家業に入る決め手になった、スカーフの美しさ。その美しさを成り立たせているのが、横浜で脈々と続いてきた技術です。
スカーフの製造は、絵柄のデザインから生地の裁断と縫製に至るまで、大きく7つの工程に分かれます。多くの布製品と同じように分業制が取り入れられていて、それぞれの工程にプロフェッショナルが関わることで、1枚のスカーフが出来上がるのです。
なかでも横浜スカーフの工程における特徴は、大きく2つ。1つが「手捺染(てなせん、てなっせん)」と呼ばれるプリントの工程です。大きな台に生地を張り付けて、1枚の型で1色ずつ載せていきます。

もう1つ、仕上げに用いられる技術が「手巻き」です。プリントが終わってスクエアに裁断した生地の縁を、ロール状に巻き込みながら均一に縫っていきます。ふっくらした上質な丸みは、職人による技の証なのです。

スカーフの魅力だけでなく、スカーフの使い方を伝える
横浜スカーフの美しさを、どうすれば伝えられるのか。遠藤さんは丸加に入社して以来、この問いに向き合ってきました。
「丸加に入った20代の頃、周囲に『スカーフってどう?』と話をすると、ことごとく断られていたんですよ。『お母さんやおばあちゃんがたくさん持っているから、私はいらない』って」
こんなにいいものなのに、なんで伝わらないんだろう──。遠藤さんは何度も悔しさを感じながら、横浜スカーフの魅力を伝えていくための試行錯誤を始めました。
「スカーフって、自分の身の回りを飾る好きなアイテムを探すなかで『これこそ欲しかった!』と見つけるものだと思うんです。ですからお客様に欲しいと思ってもらえるように、シーズンごとに柄やカラーリングで頭を悩ませたり、きれいな色を出す努力を重ねたりしています」
時代の変化に合わせて、今のお客様に届けられるものづくりを模索してきた遠藤さん。「ゆっくりですけど」と付け加えながらも、悔しさを噛み締めていた頃より、スカーフを楽しむ人が増えてきた変化を感じていると言います。

さらに、商品だけでなく伝え方にも工夫を重ねてきました。遠藤さんが店頭に立ちながらスカーフについて最も多く言われてきたのは、「難しい」「わからない」だったからです。
本当は誰でもスカーフを巻けるのに、自分には難しいと思い込んでしまう。逆に言えば、巻き方を少しでも知れたら、その壁はすぐに取り払われる。遠藤さんがそう気づいたのは、スカーフの巻き方講座を開催したときのことでした。
「講座が終わったら、参加された方が講師に『私に似合うスカーフはどれでしょうか』と聞きながらスカーフを買おうとしていて。『使い方がわからない』とたくさん言われてきたけれど、わかったら買いたくなるんだ、と目から鱗でしたね」
以来、遠藤さんは良いものづくりをすることと、スカーフの使い方を伝えていく活動の両方を重視しています。なぜなら、スカーフの可能性を信じているから。
「何度見てもびっくりするのですが、20mくらい先にいたお客様がスカーフを見つけた瞬間に『わあ、きれい!』と一直線に駆け寄ってくることがあるんですよ。遠くから見ても、いいスカーフって伝わるんです。そういうものを作って届けられることが、この仕事の誇りだと思っています」
アレンジの幅が広がる大判を、初めてのスカーフに

スカーフの届け方を模索してきた遠藤さんとレナクナッタの代表・大河内 愛加が出会ったのは、10年以上も前のこと。丸加の存在を知って以来、出身地である横浜のものづくりをしたい気持ちを温めてきた大河内は、2021年にレナクナッタとして初めてスカーフを発売しました。
とはいえ、使ったことがない人も多いスカーフを手がけることは、レナクナッタにとって大きなチャレンジ。そんな挑戦を形にすべく、柄やデザインについてさまざまな提案をしてくれたのが遠藤さんです。
特に大河内が迷ったのが「サイズ」。当初は小さいほうが取り入れやすいと考えて小判のスカーフを作ろうとしていましたが、遠藤さんはあえて80センチの大判を勧めました。
「大判のほうが巻き方のバリエーションが豊富で用途が広がるので、初めてのスカーフとしておすすめなんです。それに、多様な巻き方をできるほうが長持ちするので、日常的に使いながら長く楽しんでいただきたくて大判をご提案しました」
こうして遠藤さんとのタッグにより、レナクナッタのお客様がきっと気に入ってくださるだろう、と自信を持ってお届けできるアイテムになりました。

「Yokohama Tenassen Collection」の柄は、大河内がイタリアで撮影した天井画をモチーフにしたオーナメントが中心にあり、4つの角には横浜らしい馬車と横浜市の花である薔薇を配置しています。長く愛用してもらえるようにクラシカルなデザインに仕上げました。
1作目は完売し、2022年10月には新しいカラーでお届けします。スカーフを初めて購入する方も、すでに1枚目を購入してくださった方も楽しんでいただけるように、普段使いできるアレンジをレナクナッタ公式HPでご紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
横浜スカーフに込められたクラフトマンシップを纏う

レナクナッタの「Yokohama Tenassen Collection」の特徴は、全部で22色を使っていて色数が多いこと。立体感を出すために、1つのモチーフに複数の色を用いているのです。その数の分だけ、職人さんが細心の注意を払いながら、手捺染で色を載せています。
そして縁に施されているのは、熟練の作業を必要とする「手巻き」です。厚めの生地を使用しているため、ミシンを使用するよりも手巻きのほうが美しく仕上がります。
レナクナッタのスカーフを形にした、これらの手仕事。しかし生産量の減少により、捺染工場が次々と廃業に追い込まれています。加えて職人の老齢化により、特に手巻きの継承が難しくなってきました。
それらの技術をつないでいくことを遠藤さんは「自分の使命」として、仕事が継続的に生まれるように自社製品の製造と販売に力を入れています。
「手捺染も手巻きも、より良いものを作りたいという思いが形になったものだと思っています。簡単さと快適さが追求される世の中において、スカーフづくりにはアナログな製法が残っていて、人間の手で美しいものを生み出している。そのクラフトマンシップこそが、やっぱりスカーフの一番おもしろいところだと僕は思うんです」

スカーフの美しさを途切れさせないために、時代に合わせて届け方を変えていく。それこそが、家業に入った遠藤さんが見出した自分の役割です。
「続いてきたことを続けていくためには、時代に合わせて新しいものを作っていく必要がある。その時代にいる人ができることであり、しなきゃいけないことだと思います。そうやって子どもの世代にも横浜スカーフが続いていくように、僕もまたバトンを渡せたらいいですね」
横浜の文化を美しく纏う「Yokohama Tenassen Collection」もまた横浜スカーフが未来へとつながる一歩となるように、みなさまと一緒に、スカーフを長く楽しんでいけることを願っています。