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パールに「金継ぎ」の精神を宿すジュエリー。Urushi Collectionが繋ぐものとは | renacnatta STORY

renacnatta(レナクナッタ)のコレクションに、日本の伝統文化「漆」を纏ったパールジュエリー「Urushi Collection」が加わります。

お届けするのは、耳元を彩る2つのジュエリー。色艶が上品なアコヤパールは「Akoya Loose Baroque Pearl Earrings」に、なめらかな輝きの淡水パールは「Bicolor Baroque Pearl Earrings」に仕立てました。2023年6月29日(木)に販売を開始します。

セレクトしたのは、完全な球体の真珠に比べて価値が低いとされる、多様な個性をもつ真珠たちです。真珠のでっぱりや細かなキズ、色ムラや歪みのある部分を、漆と金箔でやさしく覆っています。

レナクナッタが「Urushi Collection」で体現したのは、日本で古来から受け継がれる“金継ぎ”の精神です。

金継ぎは、壊れた器を漆で修復する伝統的な技法。欠けた事実さえも器の歴史として受け入れ、漆の上に金を重ねた傷跡は、世界にひとつだけの美しさをもつ「景色」とも呼ばれます。

成長過程で完全な球体になれなかったパールたちは、漆と出会い、自然美を活かした新たな姿へ。そのパールしか持ちえない、唯一無二の輝きを放つジュエリーとして生まれ変わりました。

ハレの日のアイテムとしてはもちろん、デイリーに使えるジュエリーとして日々を明るく美しく彩ります。

この「Urushi Collection」でタッグを組んだのは、株式会社佐藤喜代松商店の代表取締役・佐藤 貴彦さんです。

佐藤喜代松商店は、京都で100年にわたり漆を扱う「漆のスペシャリスト」。佐藤さんは伝統を受け継ぎながら、漆塗りの車や高級文具など、革新的なアイテムを世に送り続けています。

そんな佐藤さんの技術力と漆への想いがあったからこそ、漆を纏うパールジュエリーは誕生しました。

漆の美しさや未来への可能性、奥深さについて佐藤さんに伺いながら、レナクナッタがジュエリーに込めた想いをお届けします。


研究者だからこそたどり着いた、漆の魅力


写真提供:NPO法人丹波漆

1滴1滴、人の手によって丁寧に採取されるウルシの木の樹液「漆」。

その歴史は古く、縄文時代にはすでに塗料や接着剤として用いられていました。やがて平安時代になると、平安京に漆職人を集めた漆部(ぬりべ)が置かれ、漆塗りの高度な技術が磨かれていきます。

創業1921年(大正10年)の株式会社佐藤喜代松商店は、平安時代に漆製品を製作していた工房、漆室(うるしむろ)跡の近くに建つ会社です。漆製品の製作や、漆の精製販売業を営んでいます。

屋号でもある喜代松さんは、佐藤さんの曽祖父にあたります。親から子へと代々受け継がれることが多い漆産業。その一方で、漆の需要は時代と共に減りつつあるのが現状です。

「両親からは『家業に縛られず、自分で好きなことを見つけて、好きなことをやりなさい』と言われて育ちました。継ぐつもりはなく、まったく違うことをやっていこうと考えていました」

現在、佐藤喜代松商店の代表取締役を務める佐藤さんは静かに、そう教えてくれました。漆は身近な存在だったものの、佐藤さんは大学で農学部を選択し研究の道を邁進します。大学院へ進んだ先には、農業研究所や農業関連の会社へ就職する道もありました。

しかし「何かがちがう」と感じた佐藤さんは、以前から興味があった青年海外協力隊として中米に渡り、2年間活動。その後、国際協力機構で病害虫防除にまつわる専門家として活動するため、大学での博士号取得を目指し帰国しました。

それは、佐藤さんの父が京都市産業技術研究所とともに、耐候性に優れた新たな漆の研究開発に取り組んでいたタイミングでした。

理系だから研究ができるだろうと、漆の分析、実験のアシスタントとして僕に声がかかったんです。それが、生まれて初めて漆に触れるきっかけでした」

新たな漆を世に送り出すため、佐藤さんは大学院へ通いながら、ともに研究に取り組むようになりました。

「これはおもしろい。漆はサイエンスなのだと研究をしながら初めて気付いたんです

研究対象としての魅力に加え、縄文時代から現代まで受け継がれる文化的な魅力、さらに日本の伝統美に通ずる美術工芸としての魅力をもつ、漆。

自分が感じる漆の魅力が融合すれば、もっとおもしろいことができるのではないか───。

当時26歳。研究者として邁進してきた佐藤さんが漆の奥深さに魅せられた瞬間でした。


科学とものづくりへの想いが生む、新たな漆の世界

工房が好きで、桶をひっくり返した上に座り作業を眺めていた幼少期。もともと絵を描くことやものづくりが好きだったという佐藤さんは、全国の漆器産地へ足を運び漆の可能性を見出していきます。

「これだけ漆を好きな人がいればやっていけるのではと、暗い考えをもつことはありませんでした。ただ、どんな業種も同じことばかりでは先細りしてしまう。長い間培われてきた伝統文化が廃れてしまうのは、ただただ、もったいない気持ちだったんです」

佐藤さんは博士号取得のため大学に通いながら、屋外での使用に耐えうる画期的な漆を世に広める仕事へと邁進していきます。

そして2003年、車体一面に漆を塗った艶やかな自動車が完成。「その頃には漆の世界にどっぷり浸かっていた」という佐藤さんは、佐藤喜代松商店4代目として革新的なアイテムを次々と世に送り出していきました。

漆塗りの自動車のほかにも、エレベーターや現代アーティストとのコラボレーション作品、そして今回の「Urushi Collection」もそのひとつです。そのどれもに、これまで漆と向き合い、研究してきた経験が活かされています。

「楽しいかどうかが、いちばん大事ですから」

そう笑う佐藤さん。佐藤喜代松商店の作品は斬新で美しく、ほかにはない存在感を兼ね備えているのが魅力です。そこには、幼いころから佐藤さんの胸にあった、ものづくりへの想いが息づいています。



漆文化を纏う、レナクナッタのジュエリー

「Urushi Collection」では、アコヤパールを用いた「Akoya Loose Baroque Pearl Earrings」と、淡水パールの「Bicolor Baroque Pearl Earrings」の2種のジュエリーを展開します。

パールはすべて、レナクナッタ代表・大河内 愛加が厳選したもの。今回はあえて歪みや細かなキズ、色ムラがあるパールを使用しました。

海から誕生する唯一の宝石、パール。それらに漆加工を施こすのは、決して容易なことではありません。ただ漆を塗っただけでは、パールと漆が密着せず剥がれてしまいます。

漆を纏うパールジュエリーは、佐藤喜代松商店だからこそ実現するアイテムです。漆の資材商として長年培ってきた豊富な知識と技術をベースに、佐藤さんが金属や布、皮革などに漆を塗る技術を開発し、漆の可能性を切りひらいてきたからこそ形になります。

さらに、佐藤さんが大切にしていると語るのが、ものづくりに携わる“つくり手”としての視点です。

今回は、金箔でレナクナッタの世界観を表現しました。金粉などではなく、箔を使うことで少しクールで上質な輝きとなり、それがレナクナッタらしいように思います」

似たように見えて、同じものはひとつとないパールたち。職人はそれらの個性を見極めながら、1つひとつ丁寧に加工を施していきます。

「Akoya Loose Baroque Pearl Earrings」は、突起部分のみに漆を塗り金箔を貼り付けたジュエリーです。市場ではマイナスと評価される部分に漆を纏わせ、ジュエリーとしての新たな価値を吹き込んでいます。

不完全とされるバロックパールのなかでも、突起を持って誕生するパールはごくわずか。パールは、世界一のシェアを誇る愛媛県宇和島産のアコヤパールを使用しています。

宇和海の豊かな水質が育むアコヤパールの品質は、色艶ともにトップクラス。上品でまろみのあるカラーに金箔がさりげないアクセントを添えています。

「Bicolor Baroque Pearl Earrings」は、淡水パールを用いたジュエリーです。細かなキズや色ムラのある表面を、漆と金箔でやさしく覆っています。

使用しているのは、淡水パールのなかでも数少ない「有核」真珠です。

有核真珠は、貝の中に入れられた核を包み込むように成長します。真円に近い大粒真珠が生成されやすい一方で、生産に手間ひまを要する真珠です。

欠けた器が金継ぎで生まれ変わるように、漆を纏ったバイカラーのジュエリーは、角度によって異なる景色を見せてくれます。特別な日はもちろん、日々の装いにも自然となじむデザインです。

西洋の修復技術が見た目の復元を目的とする一方で、欠けた姿に美を見出してきた日本の修復技術、金継ぎ。その精神と職人たちの技術により、ジュエリーの美しさは生み出されています。


漆とパールがもたらす、一期一会の出会い

「Urushi Collection」のジュエリーは、どれもが1点ものです。

海から生まれるバロックパールは、1つひとつが唯一無二の存在。また、木から採取する生きた塗料、漆はその日の温度や湿度によって固まる早さが異なります。

「長年この仕事に携わっていると、これはいつどういった気候の中で、どの職人によって造られたのか、作品を見てわかるものなんですよ」

細かな筆で漆が塗られ、やさしく金箔につつまれるパールたち。高いクオリティを保ちながらも、今日と明日、できあがるジュエリーに同じものは1つとありません。

古来から続く歴史のなか、パールとの出会いを果たした伝統工芸、漆。

人と自然が織り成すジュエリーには、パールと漆、そしてジュエリーを手に取る人との、儚くも美しい一期一会の出会いが待っています。

「漆は、日本人の暮らしに寄り添ってきた伝統文化です。パールジュエリーを通し、ぜひその魅力に触れていただけたらと思います。そこからまた漆との出会いが広がれば、これほどうれしいことはありません」

レナクナッタのジュエリーがみなさまの個性でさらなる輝きを放ちますように、そしてみなさまと漆文化をつなぐ架け橋になることを、心から願っています。

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執筆:永田 志帆
編集:吉田 恵理
撮影:小黒 恵太朗(工房撮影)、秋月 雅(商品撮影)

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