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「金彩」は自由で美しい | Craft Talks by Aika & Natsuko #2

新連載「Craft Talks by Aika & Natsuko」は、renacnatta(レナクナッタ)代表・大河内愛加と、金彩作家・上田奈津子が伝統工芸やものづくりについて、いつもとは違う視点で、すこし気軽にトークを繰り広げる企画です。

第2回目は、レナクナッタの商品でも人気の「金彩」について、その技術や魅力、アイテム製作の裏側までたっぷりとお話しします。

また、このトークはレナクナッタ公式Instagramで配信されたライブ配信を文字の形で残したものになります。実際の配信が気になる方は[こちら]からご確認ください。

Kinsai Collectionの詳細はこちら


自由な金彩とレナクナッタ

あいか:今回のテーマはズバリ「金彩」です。最近メディア露出も多く、フォロワーさんが増えたり、レナクナッタを新たに知ってくださった方も多いので…私が今首元にしている「Silk Skinny Scarf」にも金彩が施されているんですが、こういった商品が生まれるまでの経緯などをお話できたらと思います。まずは、なつこさんから金彩とはどういう技術なのか、教えていただけますか。

なつこ:そもそも金彩というのは、たとえば振袖や訪問着、お子さんの祝着など、晴れの日のフォーマルな着物に施す、金や銀を使った加工・伝統工芸のことです。フォーマルに限っているというのは着物の世界だけの話で、私は自由にやることも多いので、レナクナッタさんと一緒にさまざまなアイテムに金や銀を同じような加工方法で施しています。

あいか:京都の友禅着物によく使われる伝統技術ですね。レナクナッタではその技術を用いながら自由にアクセサリーなどに展開しています。金彩って着物じゃないの?と驚かれる方もいると思うのですが、たとえば西陣織の定義は「先染めの糸で織られた織物」で、別に和柄や絹じゃなきゃいけないというルールは特にないんです。「先染めして色がついた糸」で織り込むことで模様が出てくる織物が西陣織となります。実際にレナクナッタでは綿やポリエステルの糸で作ったりと、バリエーションを増やしています。金彩もすごく似ていますよね。

なつこ:そうですね。和柄にしないといけないということは一切ないですし、和柄の中でもモダン柄というのもあるわけですから、そんなに決まりはないです。

あいか:レナクナッタでは、そういう職人さんや伝統産業の人たちが、何をその技術の中で大切にしているかを分析して、自分の中で咀嚼して「金彩はここを大切にしながら、ここなら自由にできるかも」とアイテムを展開しています。それは西陣織や丹後ちりめんのアイテムも同じです。こういう考え方になったのも、金彩との取り組みが大きいと思っていて、すごく自由に表現できる伝統工芸だと感じています。



 

あいか:レナクナッタでは、なつこさんとの金彩アイテムは色々展開してきていて。最初は2019年のクラウドファンディングのイヤーアクセサリーから始まりました。そこからいろんな形に展開してヘアリボンに金彩をつけてもらったりと、毎回悩みながらやってきました。


2019年に発表した初めての金彩アイテムはクラファン期間に250個を超えるオーダーを受注

あいか:その中で、レナクナッタ的ヒットアイテムもあれば、「これは金彩とは相性が悪かったのかな」というものも...まあ、相性が悪かったなというのは正直ないですけど(笑)。お客様の反応を見ていると、イタリアシルクの柄の上にさらに金彩が乗っているものが、やはり皆さん好きだなということがわかってきて。なので最新のこの「Silk Skinny Scarf」は、レナクナッタらしさ満載のアイテムになっているかなと思います。

なつこ:そうですね。


Silk Skinny Scarfの金彩

あいか:私はイタリアのシルクと金彩の相性がすごくいいなと感じていて。まず素材が絹というのが着物と同じで扱いやすい。また、元々華やかな柄が描かれているところに金彩がのるので、縁取りのような感じになります。これは友禅での金彩の使い方と同じような感じなんですが、うちではさらに花の筋や葉っぱの葉脈とかも金彩で描いてもらってるので、元々の絵がより立体的になり深みが出て、光が当たるとキラキラと輝いて、イタリアシルクの新しい生かし方だなと感じられてすごく好きです。

なつこ:私も相性は絶対いいのは、やる前からわかっていたというか。友禅もデザインは違えど、植物とかそういうものがよく描かれています。しかもすごく華やかだし。となると、相性は絶対いいはずとは思っていました。あいかちゃんがチョイスしてくれるものってお花柄が多くて、それもやりやすいです。あと元の生地は、柄がはっきりしてない部分があるんですよ。そういうところは少し自分で想像しながら描かないといけないんだけど、仕上がってみると相性がいいから、モチベーションが全然違うというか。

あいか:本当に相互に作用していますよね。レナクナッタは、イタリアと日本の文化を掛け合わせるというのがテーマのひとつなので、それが1番表現されている。イタリアシルクと日本の着物地を使ったスカート「Reversible Skirt」はレナクナッタの定番ですが、それに続く、日本とイタリアの文化がいい感じに合わさったアイテムになっていますよね。


今後の金彩アイテムは?

あいか:なつこさん的には、これからアイテムをどういう風に深めていきたいですか?

なつこ:ちょっとアイテムというのと違うかもしれないけど…そもそも、無理をして新しいアイテムを作るという感じじゃないと思うの。レナクナッタは、洗えるようなものとかTシャツにしてくれとかじゃなくて、金彩ありきで考えてくれるというか。「金彩はこういう良さがある」とか「洗わなくてもいいよ」って言ってくれるから私の中で自由がきくし、その中で作っていけるものがあるから、非常に助かっています。

あいか:なつこさんと知り合ってから商品を一緒に作ろうってなるまで、結構時間かかりましたよね。洗えないということと、着物のものという印象もありましたし。最初は「洗えないから、服とかアパレルブランドには取り込めないのかな」と思っていて。でもそこからなつこさんの工房に行かせてもらううちに「洗えないならアクセサリーとかでもいいんじゃないか」と。実際洗えないものだらけじゃないですか。スカーフもネクタイも洗わないし。そこに気づいてから、色んなアイテムができるなって思って今に至るという感じです。

なつこ:だからアイテムを限定する必要もないのかなという気もするし、やりたいことをどんどんやっても別にいいかという気はしていて。普通に考えたら、オートクチュールのビーズ刺繍いっぱいみたいなのがじゃぶじゃぶ洗えるかというと、そういうわけじゃないから、そんな生活に寄り添いすぎなくてもいいのかなって今は思ってるかな。

あいか:しかも金彩って、やっぱり特別なものですよね。着物にしても、晴れの日に着るものだったりするので、そこら辺のハードルはあってもいいのかもしれない。じゃぶじゃぶ洗っても汗かいてもつけます!よりかは、ちょっと自分をきれいにしたい、自分を高めたい、そういう時のアイテムとしてね。

なつこ:特別なものとして使ってもらえるとね。

あいか:そうですね。前回クラウドファンディングでは、初めて金彩をオプションみたいな感じにしたんです。金彩なしのアイテムがスタンダードで、金彩ありをオプションという風にしました。「これは絶対金彩をつけて展開するんだ」みたいなのじゃなくてもいいんだというのも、気づきがあったので。これからはいろんな商品に「金彩をオプションでつけられますよ」みたいな感じでもいいのかなと思います。


2024年のクラファンでリターンとなった「Crepe Clutch Bag」。金彩はオプションで選択可能

なつこ:そうだね。やっぱりデイリーで使いたい人もいるし。

あいか:金彩がつくと特別感が高まるので、アイテムを見極めつつ。スカートとかにはできないかもですが、小物やアクセサリーはいいのかなって思いました。金彩自体にポテンシャルがあるんですけど、やっぱりなつこさんとの相性もいいなって思っています。他の職人さんに頼んでも、多分こんなもの絶対出てこないので。なつこさんのフリーハンドの技術の高さとか、あとは何回もコラボレーションを重ねてきた賜物ですね。

なつこ:そうね。今回もサクサクっとアイテムができてしまった。今回は特別早かったと思うけど、やっぱり継続するのが大事かなって思いました。阿吽の呼吸になるところまで持っていけたのも、やっぱり回数を重ねてこそ。1回限りのイベントじゃないからこそできるものだなっていうのが、レナクナッタさんとのお仕事では感じますね。

あいか:そうですね。どの伝統産業も1回きりだと、産業を元気にしたり、いろんな人に知ってもらうというところでは意味がないから、継続的にやるのは心がけているんです。でも大体1年に1〜2回とかのペースになっちゃったりもする中で、金彩は小物で他アイテムに比べたら価格帯も低いので、リピートでいっぱいコレクションしてくださる方もいるんです。金彩は継続的に挑戦しやすいし、何よりみんな大好き。うちのお客さんは金彩が大好きなので。

なつこ:嬉しいです。

あいか:なので、これからもいろんなアイテムを作っていきたいですね。という感じで、今回は金彩についてお話ししました。

なつこ:ありがとうございます。

あいか:では、次回も楽しみにしていてください。ありがとうございました!

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