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「伝統工芸」「伝統工芸品」とは?時代を超えて受け継がれる魅力を考える

renacnatta(レナクナッタ)代表の大河内 愛加です。

近年、日本国内だけに留まらず世界的にも注目を集める「伝統工芸」──耳にしただけでなんとなくイメージをつかめる言葉ではありますが、具体的にどのようなものが「伝統工芸」と定義されるのか、ご存知でしょうか。

“昔から長く作られているもの”であれば、すべて伝統工芸と呼べるわけではないのです。

その定義を知り、噛み砕いてみることで、なぜ伝統工芸が長く継承されてきたのか、その価値を伺い知ることができます。

また守り継がれてきた価値だけでなく、多くの伝統工芸に触れその素晴らしさに魅了されてきた私自身の目線と合わせて、“伝統工芸の未来”についても思いを馳せていければと思います。


レナクナッタと伝統工芸

はじめに、伝統工芸の技術を多く扱う私たちのブランド、レナクナッタについてご紹介します。

レナクナッタというブランド名は

  • 使われなくなったもの
  • 着られなくなったもの
  • 以前よりも作られなくなったもの

を使うところから由来しており、3つ目の「以前よりも作られなくなったもの」に関しては時代の流れとともに衰退している産業、つまり「伝統工芸」といわれるものとの関わりが多くあります。

ミラノでブランドを立ち上げた当初は「使われなくなったもの」と「着られなくなったもの」だけにフォーカスして、主にデッドストックになっている生地や着物を使ったアイテムを展開していました。

そしてブランド立ち上げから3年後に京都にも拠点を持つようになり、日本の伝統産業の方たちと知り合う機会が増えました。そこで、過去に作られたデッドストックや着物だけに目を向けるのではなく、長い年月をかけて継承されてきた本質的な価値があるにもかかわらず、現代において衰退しつつある産業を支えている人たちに直接的に貢献したいと思うように。そこから伝統工芸などを使ったコレクションが加わりました。

「以前よりも作られなくなったもの」もレナクナッタの一つの形だと再解釈したのです。


丹後ちりめんのマーメイドスカート

西陣織の「一生着られるウェディングドレス」

そんな背景もあり、ブランドを語るうえで「伝統工芸」という言葉は切っても切り離せないものとなっています。

では「伝統」「伝統工芸」とは具体的に何なのか。その特徴と私自身の解釈を合わせて深堀りしていきます。


伝統工芸・伝統的工芸品とは

「伝統」というと「古いこと」というイメージをする人が多いと思います。実際、「伝統」とつくものは歴史的な起源を持ち、長い期間にわたって特定の文化や社会で受け継がれてきたものです。

しかし、単に「古いこと」であるかだけで「伝統」と言えるわけではありません。伝統には様々な側面や要素が含まれており、それが単なる古さだけでなく、文化、習慣、価値観、技術、芸術などの多様な要素を包括しています。

あとにも詳しく書いていますが伝統的工芸品とは100年以上受け継がれてきたものを指します。長い年月を経て残ってきたものには、人々が絶えず守り抜いた魅力が必ずあると思います。

伝統工芸の特徴は大きく以下の4つとされています。

  1. 日常生活で使われるものを作っている
  2. 工程の多くが手作業で行われている
  3. 高度な技術を必要とする
  4. 長く受け継がれてきた歴史がある


上記の中でも個人的に興味深いのが、「日常生活で使われるものを作っている」ということ。技術的、芸術的な価値ももちろん大切ですが、日々の暮らしで使われ「生きているもの」が伝統工芸なのだと感じます。

しかし、近代技術や大量生産、大量消費、そして私たちのライフスタイルの変化の影響を受け、「伝統工芸」と呼ばれるものは需要が減り、生産量も受け継ぐ人も減少していきました。

それを受けて1974年、日本の伝統工芸を守り、技術を受け継ぐ法律「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」が制定されました。この法律に基づき、経済産業大臣によって、全国の伝統工芸の中でも代表的なものが「伝統的工芸品」として指定されています。

以下の5つの項目を全て満たしていることが条件となっています。

  1. 主として日常生活の用に供されるもの
  2. その製造過程の主要部分が手工業的
  3. 伝統的な技術又は技法により製造されるもの
  4. 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるもの
  5. 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているもの


3,4の「伝統的」というのは100年間以上の継続を意味します。4の原材料に関しては既に枯渇したものや入手が極めて困難なものもあり、その場合は、持ち味を変えない範囲で同種の原材料に転換することは、伝統的であるとされているそう。


伝統工芸を継続していくために

伝統工芸は、特定のコミュニティや文化圏で共有され、代々にわたり引き継がれてきたもの。

そこには何百年、何千年も前から現代に受け継がれてきた理由がわかる「普遍的な価値」が存在します。現場に足を運んでいる私たちも、いつもその技術が生み出すものたちに、ただただ魅せられてしまうのです。

しかし「普遍的な価値」といっても、その過程はきっと静的なものではなく、変化や進化も多く経てきたのだろうと想像します。人々を魅了しつづけてきた価値の「核」となる部分を大切に受け継ぎながらも、新しい要素が導入されたり、社会の変化に対応して修正されてきたことで今も残っているのでしょう。

重要なのは、今の社会において、伝統工芸が持つ価値がしっかりと理解され、継承されることです。伝統工芸は文化のアイデンティティであり、時には変革や発展の基盤ともなります。

そのため、単に「古いこと」として自分に関係のないものと捉えるのではなく、その背後にある歴史や文脈を理解し、現代においても必要であると認識されることが伝統の継続性につながります。

レナクナッタでは、伝統工芸が持つ、代々引き継がれてきた魅力と現代にも残ることのできる柔軟性を充分に引き出したものづくりをしていくことで、多くの人に興味関心を持ってもらえるようにする役割を担っていきたいです。


伝統工芸の未来を書き換える

renacnattaを運営している株式会社Dodiciでは、今年から企業のミッションを「伝統工芸の未来を書き換える」に掲げ直しました。

日本にある伝統工芸の多くが斜陽産業と言われています。技術の喪失・人材不足・変化する需要・価格圧力など様々な課題を抱えている中で衰退していく未来ではなくふたたび日本の文化を彩る産業になる未来へと私たちは書き換えていきたい、そんな思いを込めています。

これからも、私たちは伝統への尊重と進化の両立を目指したものづくりを続けていきます。先人が守り継いできたものを正しく見つめなおし、今の時代にあわせた楽しみ方を、みなさんと一緒に形作っていけたらと思います。

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