レナクナッタツアー in 京都 2024 | イベントレポート
伝統工芸を使ったアイテムを展開しているrenacnatta(レナクナッタ)。身に纏うだけでなく、さまざまな形でアイテムに使われている伝統工芸の生産背景を知っていただける発信をしてきました。
今回は、いつも愛用くださるお客様へのサンクスツアーという形で開催した「レナクナッタツアー in 京都」のイベントレポートをお届けします。
ツアーの内容は、ワークショップ、職人さんとのランチ、工房巡りなど、レナクナッタで展開している伝統工芸を実際に体感していただける内容が盛りだくさん。早速、ツアーの様子をご紹介していきます。
1 ワークショップ | 「丹後ちりめん」と「金彩」を体験
参加者のみなさまが集まったのは、京都にあるレナクナッタのShowroom。代表である大河内の挨拶から始まり、早速ワークショップが始まります。
今回体験するのは、「Tango Chirimen Collection」として人気の「丹後ちりめん」の技術を体感できる「ちりめんポシェット」づくりと、レナクナッタでおなじみ、「Kinsai Collection」の「金彩」を自分で描けるオリジナルタグづくりです。
講師はもちろん、それぞれレナクナッタの商品を手掛けてくださるおふたり。
臼井勇人氏
丹後にある織元「臼井織物」の3代目。従来のイメージを覆すべく、着物のみならずバッグやインテリアにも落とし込み、ちりめんの可能性を広げるために活動。
上田奈津子氏
京都の金彩工房「金彩上田」の二代目。安土桃山時代から続く伝統技術金彩を着物だけでなく現代ファッションやアートの部門にも用いて金彩の素晴らしさを伝える活動に力を入れている。
早速、ちりめんポシェットづくりが始まります。ちりめん特有のシボ(凹凸)は、たて糸と、強い撚り(より)をかけたよこ糸を交互に織り込んだ後、「精練」という工程を経ることで出てきます。
今回は、一見難しそうなこの工程を楽しく体験できるワークショップでもあります。
ワークショップを始める時のポシェットは、この大きさ。すでに丹後ちりめん特有の強い撚りをかけたよこ糸で織られているものですが、表面はツルツルしていて「これがどうやって丹後ちりめんになるんだろう?」と不思議な思いとともに作業が始まります。
これをカップの中に入れて…熱湯を注ぎます。
そこから待つこと3分。ちょうどカップラーメンと同じ長さということから着想を得た、ユーモアたっぷりの蓋も、臼井さんが用意してくださいました。
熱湯を注ぎ、取り出した布を見ると…私たちが想像する「ちりめん」の上をゆく勢いで布が大きく縮み、表面に凹凸ができています!もとの布のサイズから約70%ほど縮むそうです。
丹後ちりめんに欠かせない「精練」とは、織物に付いた糊などを落とし、撚りをかけたよこ糸が戻ることで、丹後ちりめん独特のシボと風合いを出す工程のこと。言葉で聞くと分かりづらいですが、こうして実際に体験すると、その不思議な工程がよく分かります。
取り出したポシェットを伸ばしたら、いよいよ色付けの工程。各々好きな顔料を布に垂らし、色付けを行ってゆきます。
顔料が乾いたら一度水で洗い、ドライヤーで乾かせば…シボの形も、色合いも、世界でひとつだけのオリジナルポシェットが完成です。
続いては、金彩作家である上田さんによる金彩ワークショップをご紹介します。今回体験できるのは、数ある金彩の技術の中でも「筒描き」という技法。まずは、ホイップクリームを絞り出すような形の道具に専用の糊を入れ、絞り出すように絵を描いていきます。
ちりめんのシボができた時の驚く声や盛り上がりとはうって変わって、みなさん一気に集中モードに。思い思いの絵柄を描いていきます。
出来栄えを聞いてみると、「上田さんは簡単そうに描くけど、きれいな線を引くだけでこんなに難しいんだ!」という声があがります。
描きおわったら、糊が透明になるまで乾かし、いよいよ金箔を貼っていきます。用意された金と銀の箔の中から好きな色を選び、糊の上にそっと被せます。
最初はおそるおそる、静かにこするけれども、上田さんから「もっと強くこすって大丈夫ですよ」というアドバイスを受けて、みなさん少しずつ強めの力で金箔を糊につけていきます。
キラキラと光る金箔がのっているのを見ると、「すごい!」「ちゃんと箔が乗ってる!」と感動の声が。音符やお花、中には化学式の模様など、それぞれのアイデアが満載のタグが完成しました。
2 ランチ | 職人さんを交えて、京中華に舌鼓
ワークショップの後は、Showroom近くにある京町家にて中華料理を。ワークショップの講師をつとめてくださった臼井さん・上田さんに加え、西陣織の織元である加地金襴の坂田さんも駆けつけてくださいました。
丹後ちりめんに金彩…と、しっかり集中してものづくりをしたお腹を満たしてくれる、優しい味付けのお料理を楽しみます。
テーブルにはおひとりずつ職人さんにも入っていただき、食事をしながら会話も弾みます。職人さんたちの暮らす街や京都ならではの風習の話、そして他では聞けないものづくりの現場のリアルなどをお話してくださいました。
3 工房見学 | 受け継がれる「西陣織」が生み出される現場へ
ランチの後は、工房見学です。まずは、ランチにも参加頂いた加地金襴の坂田さんの現場へ。「Nishijin Parasol」を手掛けて頂いている織元さんでもあります。
坂田雄介氏
西陣にある織元「加地金襴株式会社」の代表。西陣織の文化を未来に引き継ぐために、さまざまなプレイヤーとのコラボレーションにも注力。
坂田さんみずから、西陣織の作り方や普段どのような場所で扱われているのかなどを説明。ここでは書くことのできないオフレコの納品先の話も出て驚きの声があがりました。
「Nishijin Parasol」に実際使われた生地も広げていただきました。この柄は、大河内が「イタリアの教会や古い建物にある、朽ちたフレスコ画」をイメージしてお願いしたもので、よく見ると様々な色が混ざりボケた感じや柄が浮かび上がる部分などが分かります。
写真は実際に坂田さんが織った試し織りの生地。これも一部ですが、多くのパターンで色や織りの組織に変化をつけ、試行錯誤を重ねていただきました。
そして工場内の見学へ。普段目にすることのないような機械がズラリと並びます。西陣織のたて糸とよこ糸の関係、どのように色柄を出すのか。織り方が分かると、この複雑な柄や色合いを作り出す難しさも自ずと分かるようになります。坂田さんがこの生地を生み出してくださるまでの過程や、そこに傾けた情熱を想像できます。
また西陣織の織機を組み立てられる職人さんも、もう国内でわずかで高齢化が進んでいると聞いています。直せるものは自社で頑張ったり、廃業した機屋さんから部品を譲っていただいたり…そんな、普段は聞くことのできない現場のリアルも教えてくださいました。
3 工房見学 | 西陣織の帯の美をささえる「焼箔」に触れる
続いては、「Yakihaku Collection」を手掛ける西村商店の西村さんのところへ。
焼箔は和紙の上に漆を用いて銀箔を纏わせ、その銀の無地箔を硫化で変色させたもの。侘びた味わいを引き出すための古くから伝わる技法です。元々は出来上がった焼箔をさらに0.3ミリほどの糸状に切り西陣織の帯に織り込む、いわば「箔の糸」を専門に作る職人さんです。
西村直樹氏
西陣で焼箔を作る「西村商店」の3代目。焼箔の伝統技法を守りながら、現代の暮らしに合わせたモダンな活かし方についても研究を重ねている。
西村さんを囲み、焼箔の解説が始まりました。まずは和紙に箔を貼った状態のものを見せていただきます。
貼り付ける素材は「みつまた」というジンチョウゲ科の落葉低木の皮を使った和紙で、日本の三大和紙の中でも最も頑丈なもの。紙の作り方からていねいに解説してくださいます。
そして、箔を貼り付けた和紙を糸状に裁断したものがこちら。想像以上に細かく繊細な仕事です。この糸状になったものが、生地に織り込まれていきます。
他にも、色彩を加えたもの、レナクナッタのアイテムにも採用している銀箔を硫化で変色させたものなど、さまざまな加工技術により色柄のバリエーションが出せる様子を見せていただきます。
そしてこれらの糸が織り込まれた生地の完成形も。「和紙に貼った箔が布に織り込まれる?」と最初は頭に「?」を浮かべていた参加者の皆さんも、仕上がりを見て「こんな風になるんだ!」「たしかに箔の色が生地に浮き出ていますね」と盛り上がっていました。
4 販売会 | 最新のアイテムやサンプル品の限定販売
最後はShowroomに戻り、大河内からみなさまへのご挨拶。そして、お待ちかねのアイテム販売会です。
今回は、サンクスツアーということで、最新アイテムだけでなく過去にリリースした商品のうち、サンプルや撮影用として使用したアイテムを特別価格でお出ししました。中には数年前に販売していた懐かしくも貴重なアイテムも。
人気のスカートやワンピースはもちろん、ホームアイテム、cravatta by renacnatta(クラヴァッタ・バイ・レナクナッタ)のネクタイなども並びます。これだけ幅広いアイテムが一同に介することは、過去の展示会でも例がなく、とても貴重な機会となりました。
つい数十分前まで、職人さんと対面し、作り方やその技術の奥深さを実感してきたアイテムももちろん並びます。
「知るとやっぱり欲しくなっちゃいますね」なんて、楽しそうなつぶやきも聞こえつつ、それぞれ気になるアイテムを心ゆくまで吟味する時間を経て、ツアーは終了しました。
レナクナッタは、アイテムづくりを手掛けてくださる職人さんはもちろん、それを纏い、文化を楽しんでくださるお客様も含めてひとつのチームでありたいと思っています。
長く受け継がれてきた伝統工芸を知り、皆で楽しむことで、この美しさを未来へ繋いでゆきたい。そんな思いがあるからこそ、今回のツアーは実現しました。今後も定期的に開催できればと思いますので、ぜひ引き続き、一緒に「文化を纏う」を楽しんでいただければ幸いです。