80万円の服は高いのか?節目ごとに表情を変える人生の相棒への投資

renacnatta(レナクナッタ)代表の大河内 愛加です。
80万円の服――と聞いて、どう感じますか。
「高い」と思う方が多いと思います。たしかに、ファッションとしての衣服、行事のための“一度きりの装い”と考えれば、この価格は決して安くはありません。
でも、それが「人生に寄り添う1着」であり、 「記憶を織り込んでいく服」だとしたら。その価値は、少し違って見えてくるのではないのか、そんなふうに考えています。
このお話は、レナクナッタから1年前にリリースした振袖と訪問着にまつわるものです。
「着物を持つ」という選択が、今の時代にどんな意味を持つのか――
私自身も問い直すような1年でした。
今、改めてこのプロジェクトに込めた思いを言葉にしてみようと思います。
この文章が、着物に対する見方を少しでも変えるきっかけになれば嬉しいです。ぜひ、最後までお付き合いください。
3年かけてたどり着いた、人生に寄り添う一着のかたち
この振袖のデザインは、将来、訪問着として仕立て直しても違和感なく着られるよう、デザインのバランスには特に時間をかけて向き合いました。 振袖に求められる晴れやかさと、訪問着にふさわしい落ち着き。その両方を損なうことなく共存させるために、色使いや柄の構成に何度も頭を悩ませました。
華やかさを表現するために、 生地に選んだのは「緞子(どんす)」と呼ばれる、上品な光沢をもつ丹後ちりめん。しっとりとした艶があり、地模様そのものに繊細な存在感があります。

地の色には、通常2〜3色が一般的とされるグラデーションに、あえて5色を重ねるという挑戦をしました。引き染めという技術を使い、プリントではなく刷毛による手作業でグラデーションができています。

柄を多く盛り込まなくても、この生地の質感とグラデーションの重なりだけで、十分な華やかさと奥行きを表現できると思ったので、盛りすぎない引き算のバランスを大切にしました。
その結果として、地模様として織り込まれた雲に、引き染めでグラデーションを加え、その上に手描き友禅で新たな雲のかたちを重ね、さらに金彩で輝きを添えました。


この配色と構図の落としどころにたどり着くまでに、実に3年という歳月を費やしました。それは、ただ「美しい」だけでなく、人生のさまざまな場面に自然に寄り添う一着をつくりたかったからです。
一生、着られる“本物”の振袖
レナクナッタの振袖は、仕立て代込みで80万円(訪問着は70万円)。私たちが目指したのは、一度きりの晴れ着ではなく、一生ものの着物でした。
先日、「一生着られる着物」であるということを、しっかりビジュアルで伝えよう大掛かりな撮影に挑戦。どういう機会で着られるのか、一例にはなりますが写真と共にご紹介させてください。
振袖との物語は二十歳の成人式から始まります。色味をを黒×紫×ゴールドに絞りクールな印象でまとめました。

大学の卒業式は、はかまと合わせて。ポニーテールでまた印象がガラリと変わります。

親しい人の結婚式にも。会場に華を添えるようなゴールドの帯を合わせました。

そして自分自身の結婚式の前撮りやお色直しにも。renacnattaの西陣織の帯を合わせました。帯揚げや帯締めもアイボリーを選び、花嫁衣装の小道具を組み合わせることで雰囲気がガラリと変わり、撮影現場でも感嘆の声が上がりました。

このように帯や小物を変えたり、結び方やアレンジに変化をつけることで、節目節目に表情を変えてくれます。グラデーションにさまざまな色が入っているからこそ、どんな小物も馴染みがよく、コーディネートを考える時間も楽しい時間でした。
結婚後も、母になっても、着続けられる
結婚後は袖を詰めて訪問着として着てもらえます。ここからが普通の振袖とは違うところ。一般的な振袖は袖を切ったとしても、なかなか歳を重ねたら着られないデザインが多いですが、レナクナッタはそれが叶います。
子どもの七五三・入学式や、

式典への参加、

特別な観劇の日も。

人生の中で何度も袖を通すことができます。
人生の節目に、何度か訪れるであろう“着物を着たい日”のことを考えたとしたら——
そのたびに着物をレンタルしていくと、知らず知らずのうちに積み重なる費用。
相場の中間あたりで見積もっても、合計で80万円近くになることもあります。
しかもそれは、その日限りの記憶とともに、返却されていく。
けれどもし、ひとつの着物が、自分の時間とともに積み重なっていくものだったら。
そう思うと、"買う"という選択は、ちょっとだけ違った意味を持って見えてきませんか?
価格以上に大きいのは、「本物を持つ」という体験
しかし私が何よりお伝えしたいのは、 一着の着物を通して感じられる「本物を手にすることの確かさ」です。
この着物には、織り・染め・友禅・縫製すべてに、今ではなかなか見られない手間と技術が注ぎ込まれています。
関わった職人さんたちが、口を揃えて言ってくれました。
「ここまで手の込んだ振袖は、今では珍しい」と。
今の着物の多くは、現代の技術や合理化によって、より手頃な価格で流通するようになっています。
一方で、かつてのように、職人の手で織り、一筆ずつ染め、縫い上げられる着物は、いまではごく限られた存在になりました。レナクナッタの振袖は、その数少ない「手間と時間を惜しまない作り方」を受け継いだ一着だと自信をもって言えます。
レナクナッタの着物は、袖を通したその日だけで、その役目を終える服ではありません。節目ごとに袖を通すたび、思い出が重なり、少しずつ“自分だけの着物”になっていきます。やがて、思い出と共に娘、孫へと受け継がれていく――そんな未来も、きっと美しいですよね。
着物を“買う”という選択が残すもの
たしかに、80万円という金額は大きな買い物です。
でもそれは、「時間をかけて、丁寧に生きる」という価値観への投資でもあります。
「買って、すぐ手放す」そんな時代だからこそ、一生ものの一着を持つことは、少しだけ立ち止まって、自分のこれからを考えることにつながる気がします。
この着物が、丁寧に生きることや、次の世代に残したいものを見つめ直す、そんなきっかけになればと思います
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