折りで「織り」を楽しむNishijin-ori Folded Skirt に込めた思い

renacnatta代表の大河内 愛加です。
これまでのレナクナッタとちょっと違うスカートができました。SNSでも嬉しい反応をいただき、みなさまにお披露目できる日を心待ちにしています。
ちょっと変わった背景から生まれた今回のスカート。Magazineでは一緒に作った西陣織織元のサカイタカヒロさんへのインタビュー記事も先日公開されましたが、今回の記事では私自身がスカートについてしっかり綴ってみようと思います。
はじまりは、「制服をつくる」ことから
Nishijin-ori Folded Skirtをつくろうと思ったのは、スキンケアブランド「Sericy(セリシー)」の立ち上げがきっかけでした。セリシーは西陣織の織元・サカイタカヒロさんと共同代表をつとめていて、西陣織の絹から抽出する「セリシン」という保湿成分をつかったスキンケアブランドです。(詳しくはぜひセリシーのInstagramをご覧ください→@sericy_official)
西陣織の織元・サカイさんとは、2019年の出会い以来、ウェディングドレスや四季を表現したスカート、マスクなど、レナクナッタの中でも特に印象的なプロジェクトをいくつもご一緒してきました。
そんな中で、「西陣織の絹由来のスキンケアブランドを一緒に立ち上げよう」と誘われ、そのコンセプトがレナクナッタにもかなり通ずるところがあったのでご一緒することに。こうしてセリシーが生まれました。
スキンケアブランドの代表として自分が前に立つことを考えたとき、これまでレナクナッタでつくってきた西陣織のスカートは、どれもエレガントで女性的なものが多いと感じました。そのため、シンプルでユニセックスなセリシーの世界観には少し違うように思えたのです。
かといって、他の産地の生地を使ったスカートを纏うのもしっくりこない。
それなら、セリシーを象徴するような一着を、西陣織で一からつくってみよう。
そう思い立ったのが、このスカートのはじまりでした。
「Folded」というデザイン
商品名にあるFoldedは、「折り重ねる」という意味です。
レナクナッタでは、オンライン販売を中心に展開していることもあり、これまでもフリーサイズ設計を大切にしてきました。これは日本人女性の平均的な体型に合わせたサイズという意味ではなく、どんな体型の方にもぴったり着ていただけるということを意識しています。
今回のスカートもその考えは一緒ですが、これまでと違うのは「巻き」ではなく「折り畳む」ことでウエストを自由に調整できる構造にしているところです。

西陣織は光の当たり方によって柄の表情が変化し、織の奥行きが美しく浮かび上がるのが特徴です。その魅力を最大限に生かすために、あえて大きな折り目をデザインのアイコンとしました。布を折ることで、光と影が重なり合い、西陣織の立体感や深みをより感じていただける一着になっています。
実はこのデザイン前にもぼんやり考えたことがあって、サンプルも作ってみたものの納得いかずボツにしたことがあり。さらにこの生地も別のプロダクトに使うところ、相性が合わずボツにしたことがあり…。
たまたまではありますが、過去に諦めたデザインと生地同士が組み合わさり、「このためだったのかもしれない」と勝手に感慨深くなりました(笑)。
「白練」と「墨黒」
西陣織の定義は、先染めされた糸で織られる紋織物。後染めや印刷ではなく、縦糸と横糸の重なりによって柄を表現する、非常に緻密で立体的な織物です。
西陣織というと、和柄や光沢のある絹を思い浮かべる方も多いかもしれません。けれど実際には、その可能性はもっと広く、現代のファッションにも自然に馴染むテキスタイルです。
このスカートに使われているのは、鳳凰の羽を抽象的に表現した柄。繊細でありながら、日常の装いにも溶け込むデザインです。(素材もポリエステルを採用していますのでおうちでのお手入れが可能です。)
そしてカラーには、セリシーの世界観を象徴する二つの色を選びました。

ひとつは「白練(しろねり)」——精錬工程で生糸を洗い流した後の、絹そのものの柔らかな色。
もうひとつは「墨黒(すみぐろ)」——西陣の世界で古くから使われてきた、深く静かな黒。
どちらも、素材の本質を感じさせるような色にして、織の立体感が静かに際立つ上質さを目指しました。

今回の撮影場所には、西陣織の工房を選びました。このスカートの生地が実際に織られている場所です。 工場での撮影はこれまでも何度かありますが、普段は稼働していない日や場所を選ぶことが多く、実際に織機が動いている中での撮影は珍しい体験でした。
撮影のすぐ隣で、職人さんがせっせと生地を織り進める姿があり、その光景がとても印象的で、ものづくりの現場の空気をひしひしと感じるシューティングとなりました。
完成したスカートを見て、職人さんたちにも喜んでいただけたのも、嬉しかったです。
纏う人に届けたいこと
個人的には、このスカートを身につけると、自然と背筋が伸びるような感覚があります。余計な装飾がなくても、スカートそのものが持つ品と存在感が、着る人に自信を与えてくれる。そんな一着になれば幸いです。
シンプルなトップスに合わせるだけで、品のあるコーディネートが完成しますよ。(これはレナクナッタの得意技。)

文化を、自然に纏う
このスカートに込めた思いは、「伝統を守る」というよりも、“今の暮らしに自然に溶け込む文化のあり方”を感じてもらうことです。
それはスキンケアブランド・セリシーにも共通する考えです。文化や技術を特別なものとして遠ざけるのではなく、日々の装いや暮らしの中で、優しく寄り添う存在として息づかせたい。
ただ、単にカジュアルに取り入れるのではなく、素材や工芸が本来持つ品格や背景を大切にすることも意識しています。
西陣織は古くから高級帯などに用いられ、格のある場面を彩ってきました。だからこそ今回のスカートは、日常に馴染みながらも、その上質さや気品を感じられる佇まいを目指しています。これは、どの工芸においても共通する考え方で、“どのように使われ、どんな役割を担ってきたか”を尊重することから、ものづくりを始めています。

そして、今回お揃いのネクタイもできました。白練はお祝いの席にぴったりな華やかさがあり、墨黒はビジネスシーンでもパーティーシーンでもさりげなく目を引きます。墨黒のネクタイは表裏の使用をスカートと変えており、柄は同じでもさりげなくツートーンを楽しめるデザインになっています。
Nishijin-ori Folded SkirtとNishijin-ori Tieが、そのひとつの形として、これからの日常に自然に溶け込んでいくことを願っています。
撮影:岡本依里(商品)
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